※ 図のキャプションを一部修正しました(2026年9月1日)

研究者情報

発表のポイント

  • 地球深部の主要鉱物の一つデイブマオアイトが、従来想定よりはるかに少量しか水を取り込まないことを、超高精度高温高圧実験により明らかにしました。
  • これまで「下部マントルの水を担う可能性がある」と考えられてきたデイブマオアイトは、実際にはほぼ乾いた状態で存在することが判明しました。
  • この発見は、深部水が主に沈み込んだ地殻物質に集中するという新しい描像を提示しました。

概要

 岡山大学学術研究院先鋭研究領域(惑星物質研究所)の石井貴之准教授、広島大学の高市合流特任助教、愛媛大学、帝京科学大学、京都大学大学院理学研究科の伊藤正一准教授、高輝度光科学研究センター、中国北京高圧研究センターの国際共同研究グループは、大型放射光施設SPring-8において、川井型マルチアンビル高圧発生装置と放射光X線を組み合わせ、地球下部マントルの主要鉱物であるデイブマオアイトの含水下の体積を、下部マントル最上部条件までの高温高圧下で精密測定しました。この成果は7月24日、英国の地球科学誌「Communications Earth & Environment」に掲載されました。デイブマオアイトの水含有量は、実験的に決定することが難しいため、地球深部の水循環モデルを構築するうえで大きな障壁となっていました。本実験結果から、乾燥・含水条件で合成したデイブマオアイトの体積はほぼ同じで、水溶解度は従来の推定の1/10以下(0.08 wt%以下)であることが明らかとなりました。主要下部マントル鉱物が水を保持しないことから、深部の水は沈み込む地殻物質に集中するという新しい水循環モデルを提案しました。本成果は地球内部の物質循環と進化の理解を大きく前進させるものです。

画像
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沈み込むプレート内の水の分布。沈み込むプレート内部では、深さによって水の保持能力が大きく変化します。マントル遷移層までの深さでは、ウォズレアイトやリングウッダイトが数wt%の水を保持できるため、プレート内部の水は主にこれらの鉱物を含む領域に蓄えられます。一方、プレート表層の地殻物質層では、シリカ鉱物が一部の水を取り込むことが知られています。下部マントルに入ると、ブリッジマナイト、フェロペリクレース、デイブマオアイトなどの主要下部マントル鉱物は水をほとんど保持できません。そのため、プレート内部の水はペリドタイト中にはとどまらず、より水を保持できるシリカ鉱物を含む地殻物質層へ再分配されます。シリカ鉱物は下部マントル条件で高圧相へと相転移し、さらに多くの水を保持できるようになるため、深部へ進むにつれて水は地殻物質層に集中していきます。このように、下部マントルでは水の輸送と保持が地殻物質層によって制御され、深部の水は主にシリカ高圧鉱物を含む沈み込む地殻物質に蓄えられると考えられます。

研究者のコメント

「今回の成果は、日本が世界をリードしてきた放射光×マルチアンビルプレス技術を、国内研究グループが最大限に融合させたことで実現しました。マルチアンビル実験は、『地球深部をそのまま実験室に再現できる』強力な手法として進化を続けています。この知と技を次世代へ継承し、学生や若手研究者が『自分もマルチアンビルで地球の謎に挑みたい』と心から思える環境を広げていきたいと考えています。興味を持たれた方は、ぜひ一緒に研究しましょう。」(石井貴之)

Source: https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-08-31