研究者情報
研究者名
久保 允人
概要
東京理科大学の久保 允人名誉教授(京都大学医学研究科特定職員(免疫モニタリングセンター(KIC)特任教授)、同大学生命医科学研究所の本村 泰隆准教授、慶應義塾大学医学部内科学教室(リウマチ・膠原病)の佐々木 貴紀助教(研究当時:東京理科大学 助教、Harvard Medical School, Brigham and Women's Hospital Research Fellow)、理化学研究所 生命医科学研究センター、米国Benaroya Research Institute、アラバマ大学、アイカーン医科大学マウントサイナイ、ワシントン大学セントルイス校の国際共同研究グループは、アトピー性皮膚炎などの局所的な皮膚の炎症が、食物アレルギーや喘息、さらには致死的な全身性アナフィラキシーへと進行する「アトピーマーチ」の根底にある細胞・分子メカニズムを解明しました。
本研究グループはまずマウスモデルを用いた実験を行い、アトピーマーチにおいては、2型サイトカイン「IL-13」がB細胞やT細胞ではなく、特定の樹状細胞(IL-13受容体およびフラクタルカイン受容体発現陽性2型古典的樹状細胞:cDC2)に作用して抗原提示能を著しく向上(ライセンス化)させ、アレルゲンに高親和性のIgE抗体の産生を誘導することで、全身性アナフィラキシーへ至ることを発見しました。
次に、ヒトのアトピー性皮膚炎患者の皮膚やアレルギー患者の末梢血でも、IL-13受容体発現陽性cDC2の増加と血中アレルゲン特異的IgE値との相関が確認されました。また、血液中をパトロールするcDC2は、フラクタルカイン受容体(CX3CR1)に依存して二次リンパ組織へアレルゲンを運搬します。この受容体の阻害薬はアレルゲン特異的IgE抗体の上昇を抑制しました。
本成果は、アトピー性皮膚炎における抗IL-13抗体医薬の高い臨床的有効性のメカニズム的根拠を提供するものです。また、フラクタルカイン受容体の阻害薬がアトピーマーチに有効である発見は、新たなアレルギー疾患治療戦略の開発に大きく貢献することが期待されます 。
本研究成果は、2026年7月9日に米国科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』に掲載されました。また、2026年7月23日には、本研究成果を含むアトピーマーチにおけるIL-13シグナルとcDC2の役割についての総説論文が国際学術誌『Barrier Immunity』に掲載されました。
研究者のコメント
「アトピー性皮膚炎のある人は、さまざまなアレルギーを起こしやすいことが知られています。近年では、化粧品に含まれる食品由来の成分や、ダニの唾液に含まれる物質、さらには赤身肉に含まれる糖が、知らないうちに皮膚から体内に入り、食事をきっかけにアナフィラキシーショックを引き起こしてしまうケースが社会的な問題となっています。
私たちの研究は、このような『アレルギーが連鎖的に起こる仕組み』をどのようにコントロールできるかを明らかにすることを目的に行われました。
本研究は、京都大学大学院医学研究科 医学研究支援センター 先端バイオメディシン解析技術室の多大なご協力により実施されました。この場を借りて深く感謝申し上げます。」(久保允人)
Source: https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-08-24-0